管理栄養士の たにひら えりこ です。
自分の『市場価値』を上げるため、私は管理栄養士に加えてセカンドライセンスを取得することを考えました。
転職した職場で、NST専門療法士の資格を知り、受験するチャンスがありました。
その際におこなっていた勉強の方法、過去問についてなどを記事にしていきたいと思います。
目次
この記事を読んでわかること
①NST専門療法士について
②NST専門療法士受験までの流れ~注意するポイントまとめ~
③NST専門療法士試験対策と勉強方法
④実際の試験で出題された問題
⑤NST専門療法士試験合格後について
①NST専門療法士について
・NSTとは何か?
Nutrition Support Team=栄養サポートチーム の略称です。
医師・歯科医師のほかに、管理栄養士・看護師・薬剤師・臨床検査技師・言語聴覚士・理学療法士・作業療法士・歯科衛生士などの他職種が協働して、入院中の低栄養患者に対し、疾病の治療や栄養補給法についての検討を行い、より良い栄養管理をおこなっていくチームのことです。
・NST専門療法士とはどんな資格か?
日本臨床栄養代謝学会が試験をおこない、認定している資格です。
資格試験を受験するには以下の条件を満たしている必要があります。
(1)日本国の以下に掲げる国家資格を有すること。
認定対象国家資格:管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師(2)当該国家資格により5年以上、医療・福祉施設に勤務し、当該施設において栄養サポートに関する業務に従事した経験を有すること。
(3)本学会学術集会に1回(10単位)以上、本学会主催のNST専門療法士受験必須セミナー(旧 JSPEN臨床栄養セミナー、コ・メディカル教育セミナー10単位)に1回以上参加することを必須とし、この単位数を必須単位数とする。必須単位数30単位以上を有するか、または、必須単位数に加え、本学会が認める栄養に関する全国学会、地方会、研究会への参加単位数の合計が30単位以上あること。なお、「バーチャル臨床栄養カレッジ」修了証については非必須10単位を認める。
(4)第4章の規定により認定された認定教育施設(以下、認定施設)において、合計40時間の実地修練を修了していること。
(5)上記(1)から(4)までの条件を満たした後、認定のための試験に合格していること。
日本臨床栄養代謝学会HPより引用
・NST内での管理栄養士の役割
①患者さんの体格や病状に応じて必要栄養量を算出。
②食事からの摂取栄養量をモニタリングして算出、経腸栄養剤・静脈栄養(点滴)をおこなっている場合は、
それらからの摂取栄養量も計算・確認、水分摂取量なども考慮し、栄養補給方法・提供する食事内容や食形態を
決定するための助言をおこなう。
③場合によっては、看護師と排便状況を確認したり、薬剤師と投薬内容について確認をおこなうこともある。
④週1回の他職種合同のカンファレンス・NST回診に同行し、患者さんの状態に、食事内容が合っているかを確認。
上記以外にも、患者さんに合う経腸栄養剤の選定や、実際に提供される食事内容変更のオーダーを
厨房に伝達する橋渡し役を担うなど、NST内での管理栄養士の役割は多く、チームの要的存在と言えます。
臨床で管理栄養士をやりたい人にとっては、とってもやりがいのある魅力的な役割・仕事内容だと思います。
②NST専門療法士受験までの流れ~注意するポイントまとめ~
認定までの流れⅠ
単位を集める
日本臨床栄養代謝学会が主催する、単位取得条件に必須である、学術集会・NST専門療法士受験必須セミナーに参加する。
そのほかにも、単位がもらえる地方会や研究会があるので参加し、合計30単位を集める。
【認定までの流れⅠで注意するポイント】
・学術集会は毎年1回、2月に行われていて、事前申し込み及び当日申し込みも可能で、定員はなし。
学術集会に参加しての10単位は比較的簡単に取得が可能。
→2021年開催の学術集会はオンラインを併用した形態になるようです。
第36回日本臨床栄養代謝学会学術集会
・問題はNST専門療法士受験必須セミナー。NST専門療法士の資格を取ろうと決意したら、なるべく早い受講が必須!
→こちらも2020年はオンラインでの開催のようです。私が受講した時は定員があり
申し込みはクリック合戦でしたが、オンラインでの開催のため、定員の記載はHPにありませんでした。【募集終了】2020年 第2回 NST専門療法士更新必須セミナー オンライン受講 受付開始のご案内
・地方会や研究会は、2単位の取得が出来るものと、5単位の取得が出来るものに分かれているほか
認定期間が終了してしまっているものがあるため、自分が取得した単位が申請の際に
有効なものか学会HPで確認し、単位不足にならないようにする。
認定までの流れⅡ
実地修練を受ける
認定教育施設において、計40時間の実地修練を受ける必要があります。
仕事をしながらNST専門療法士の資格を取ろうとすると非常にネックになるのがこの実地修練。
日本栄養代謝学会から「NST稼働施設」および「学会認定教育施設」の認定を受けている施設に
各施設が定める5~8日間の期間、計40時間通う必要があります。
施設ごとに異なるとは思いますが、だいたい月曜~金曜の平日5日間×8時間で40時間としている施設が多く
自分の勤務先には休む許可を取る必要があります。
自分の勤務先が、NST加算算定のために、資格取得に協力してくれると良いのですが
そうでない場合は、次年度目標設定などの面談で、早い段階から相談・交渉をしておくと良いと思います。
【認定までの流れⅡで注意するポイント】
・実地修練を行っている教育施設が地域によっては少なく、定員がすぐに埋まってしまうので
各施設のHP等を確認し、どんどん問い合わせをおこなうことをおすすめします。
・施設によっては、病院勤務5年が経過し、規定の30単位を集め終わっていて
あとは実地修練を受けて症例を書けば試験を受けられる状態の人を
優先的に受けている所もあるので、相談してみるのも良いかもしれません。
※コロナ禍の状況で実地修練を実施しているかは各施設にお問い合わせください。
認定までの流れⅢ
認定試験の受験申請書と必要書類を専門療法士認定制度委員会へ提出する
NST専門療法士の認定試験申請の際に必要な書類の中に、実地修練中の40時間に、その施設において携わった
静脈経腸栄養管理中の患者に関する1,600字以内の症例報告を書くことになります。
必要書類の中でも、用意するのが一番大変で、一番時間をかけて作成した方が良いものです。
症例報告は提出すれば何でもよい訳ではなく、選考委員の先生方が一つ一つに目を通して審査しているので
しっかり書く必要があります。
※元の職場のNSTチェアマンの先生が選考委員をされていて上記のようにお話しされていたので、確かな情報だと思います。
【認定までの流れⅢで注意するポイント】
・症例の選定について
絶食(静脈栄養)→経腸栄養開始→徐々に経口摂取を開始した症例が王道だと思いますが
何の問題もなく、綺麗にまとまりすぎている症例だと1600字書くのは難しいかもしれません。
私が症例報告を書く時は、先に実地修練を受けた方が書かれた症例報告書を参考に
見せて頂く事が出来ました。
クリティカルパスを逸脱してやや難渋したが、NST介入により改善し
入院期間があまり長くない症例を選ぶと非常に症例報告が書きやすい印象です。
・学会・研究会の参加証は、学会名・氏名記入の部分が必要です。
下の領収書部分のみでは申請しても受理されません。
また、原本の提出が必要なので、必ずコピーを取って手元に残しておくのが良いと思います。
・2019年度より、認定試験受験申請時には日本臨床栄養代謝学会員である必要があるようです。
私が受験した時は試験合格後に所属でも良かったのですが、制度が変更になっているようです。
ご注意ください。
認定までの流れⅣ
認定試験を受験する
【認定までの流れⅣで注意するポイント】
・認定試験は年1回、11月に開催されています。受講料は10,000円です。
・試験時間は2時間、出題される問題は80問です。
全てマークシート方式になります。単純計算で、1問を1分30秒で回答していく必要があります。
・問題冊子の後半には計算が必要な症例問題が用意されています。
前半の比較的暗記で対応出来る問題は、迷わずどんどん進めていく事が大切です。
認定までの流れⅤ
認定試験に合格し、認定申請書の送付と認定料の納入が完了すると
NST専門療法士として認定される
【認定までの流れⅤで注意するポイント】
・認定料が20,000円かかります。
・合格後に抜け殻にならず、必ず手続きを行うようにしてください!!!
③ NST専門療法士試験対策・勉強方法
試験の難易度
栄養関連の問題なので、受験資格のある他職種に比べると
普段から経腸栄養や静脈栄養のことを業務でおこなっている管理栄養士は
有利だと思いますが、出題範囲が広く、覚える事や計算して正解を求める問題もあるため、難易度は高いと思います。
生化学・臨床栄養学・静脈栄養の投与速度や投与量について・病態別栄養管理などなど。
NST専門療法士資格受験の時は、最短でも管理栄養士国家試験を受けてから5年が経過しているはずなので
一から勉強するつもりで、本腰を入れて勉強し直した方が良いと思います。
試験対策
日本臨床栄養代謝学会(旧日本静脈経腸栄養学会)が編集しているハンドブックやガイドラインの確認を行うこと、
過去問題集を繰り返し解くこと、管理栄養士国家試験の生化学や臨床栄養学の問題を解いてみるのも良い勉強になります。
下記は私が実際に使用していた参考書・過去問題集です。
●日本静脈経腸栄養学会 静脈経腸栄養ハンドブック
臨床を理解するうえで必須の基礎的分野(解剖、生理、生化学、代謝)に重点をおいて解説してある参考書。
NST専門療法士を目指すなら必携です。
●静脈経腸栄養ガイドライン
栄養療法を行う際のガイドラインをまとめた1冊。
エビデンスをもとに推奨度分類がされており、推奨度が高い項目については暗記して試験に臨むことをおすすめします。
●日本静脈経腸栄養学会認定試験 基本問題集
静脈経腸栄養ハンドブックに基づき、62問の基本問題を掲載。
過去には、解説部分から高頻度で出題されているため、問題を解くだけでなく
解説をきちんと読み込むことをおすすめします。
●一般社団法人 日本経腸栄養学会 NST専門療法士認定試験 過去問題集Ⅰ
実際に出題された過去問題の中から、厳選した66題を掲載しています。
●2019管理栄養士国家試験過去問解説集〈第28回‐32回〉5年分徹底解説
上記の問題集を解き終わり、時間に余裕があれば、管理栄養士国家試験の生化学・臨床栄養学の過去問もチェックしておくとよいと思います。
私の主観ですが、管理栄養士の国家試験よりも、より難易度の高い問題が出題されるはずですので、問題のレベルを確認するためにも、この方法はおススメです。
私がおこなった実際の勉強方法
試験の約半年前から、コツコツ勉強を始めました。
1⃣静脈経腸栄養ハンドブックを読み、自分なりにノートにまとめる
- レニンによる血圧上昇の仕組み
- 尿素回路
- グルコースの代謝経路(TCAサイクル)
- 解糖系回路
- クエン酸回路の異化反応と同化反応
- 糖新生の経路
- 酸・塩基
- 各臓器の部位や働き
上記は、⇩の写真のように、ノートにまとめて繰り返し書いて覚えました。
とにかく範囲が広く、何度もくじけそうになりました…。
当時は仕事・勉強・家事が重なり、ストレスでかなり髪の毛が抜けていました。
家事はもう少し手を抜いても良かったかなと反省しています。
2⃣NST専門療法士受験必須セミナーでもらった冊子を確認
NST専門療法士受験必須セミナーでは、学会が作成した参考資料が配布され、それに沿って講師の先生の講義を受講します。
静脈経腸栄養ハンドブックの内容に沿っていますが、試験に出る重要なポイントをまとめてお話してくださっていますのでこちらの冊子も繰り返し見直して勉強していました。
ポイントがまとめられていて、ハンドブックよりも軽量なので、私は試験会場にも持参しました。
3⃣静脈経腸栄養ガイドラインの前半の、項目と推奨度ランク付けが表に記載されている部分をコピーして丸暗記
これは、元の職場のNSTチェアマンの先生が教えてくださった勉強方法です!
他のNST専門療法士試験対策ブログなどには載っていない情報だと思います。
4⃣NST専門療法士の問題集・過去問、管理栄養士国家試験の生化学・臨床栄養学の過去問を解く
参考書・問題集の項でも触れましたが、NST専門療法士の試験では、管理栄養士国家試験の過去問より
難しい問題が出題されるはずだと思ったので、管理栄養士国家試験のレベルを確認するために、解いてみました。
NST専門療法士試験は症例問題が必ず出題されるので、管理栄養士国家試験の臨床栄養学の症例問題は
解いておいてよかったと思います。
基本問題集は、過去には、解説部分から高頻度で出題されているため、問題を解くだけでなく
解説をきちんと読み込むことをおすすめします。
5⃣あとは繰り返し暗記、過去問を解く、実際に時間を計って問題を80問解いてみるなどの対策をしていました。
実際に出題された問題 (覚えている範囲)
- 胃の部位
- 膵臓の位置
- 必須アミノ酸を選べ
- 小児に必要なアミノ酸はどれか
- 嚥下の咽頭期はどんな運動をしているか
- クエン酸サイクルに関連するものを選べ
- NPC/N比を計算せよ 糖質80g タンパク質25g 脂質20g
- 呼吸性アシドーシスの際に変化するものを選べ
- 脱水症の症状について正しいものを選べ
- ミネラル製剤に入っていないものを選べ
- TPNに用いられる輸液の糖質はどれか選べ
- CRPについて正しいものを選べ
- 胆汁の生成と分泌について正しいものを選べ
- アルブミンの半減期について間違っているものを選べ
- 糖新生に利用されないアミノ酸は何か
- 症例:短腸症候群 回腸が残存しているとき欠乏しないものはどれか
- 症例:急性膵炎患者の栄養管理について
NST専門療法士認定試験に合格した後
試験勉強はとても辛かったですが、勉強したことって、当たり前ですがとても役に立ちます。
日頃の業務で経腸栄養プランや静脈栄養プランを自信をもって主治医に提案できるようになりました。
また、学会に参加して最新の臨床栄養の知識を得ることもとても刺激になります。
残念ながら、私は、NST専門療法士を取得後も、もともと働いていた職場では
嘱託職員という位置付けだったため
NST専従の管理栄養士として働く事は出来ませんでした。
しかし、NSTの他職種合同カンファレンスやNST回診に毎週参加させてもらえた事や
実際に上手く稼働しているNSTのチームの様子を見る事が出来て、とても勉強になったし
臨床の事を色々教えて頂いた先生や先輩の管理栄養士さん、看護師さん、薬剤師さん
臨床検査技師さんには本当に感謝しています。
合格後に転職活動をしましたが、NST専門療法士の資格を持っていることについて
面接で質問されることが多く、興味を持ってもらえる場面があったので
転職活動の際には、管理栄養士以外にも何か資格を取るということは
大きな強みになると思います。
※資格取得にかかる費用等についての詳細は、日本栄養代謝学会(JSPEN)HPをご確認ください。
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